
前号に引続き、実際に当センターへ寄せられたご相談内容を、個人情報に配慮した上でご紹介させて頂きます。
【ご相談内容】
1ヶ月前に私の母が亡くなりました。私は母が亡くなる前と後に母名義の預金口座から現金を下ろしており、その金額は合計で500万円弱です。
いろいろと事情があって、私は相続放棄をしたいと思っています。このような状況で放棄することは可能でしょうか。
また、私は母名義で借りている賃貸住宅に母と二人で住んでおり、母の死後もそこに一人で住んでいます。このまま住み続けていたら、相続放棄が認められなくなるのでしょうか?もし退去しなければならないとすると、あとどれくらい住んでいられるのでしょうか?
【回答】
相続放棄を希望する場合、相続の発生を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。しかし、3ヶ月という法定期間を過ぎた場合や相続財産の全部または一部を処分した場合は、単純承認したものとみなされ相続放棄をすることができません(ただし、遺産の調査に時間がかかる場合などは、裁判所に申し立てることで法定期間を延長してもらえる可能性があります)。
したがって、相続放棄を考えている相続人は、被相続人の預貯金などには一切手を付けないようにするのが基本です。あなたの場合は、既に相続財産の一部を処分している状況と言えますから、相続放棄は難しいと考えるのが一般的でしょう。
しかし、引き出したお金の使途によっては、相続放棄が認められる可能性もあります。例えば、被相続人の預金を葬儀費用や仏壇・墓石の購入費の一部に充てたような場合は前記の処分には該当せず、法定期間内であれば相続放棄できるとされます。具体的なことは、管轄の家庭裁判所へお尋ねになってみることをお勧めします。
また、現在お住まいの賃貸住宅についてですが、賃借人としての地位も相続財産の一つです。あなたがそのまま居続ければ相続することを単純承認したことになりますので、相続放棄をするつもりであれば速やかに退去しなければなりません。
退去に際して敷金の全部又は一部が返還されるケースでも、相続放棄をした相続人には当然受取る権利はありません。亡くなった方の家財についても、一部でもあなたが引き取ってしまえば、相続放棄が認められなくなる場合があります(ただし、軽微な慣習上の形見分け程度のものであれば問題無いでしょう)。
あなたが相続放棄をすることによって他に相続人となる人がいる場合は、その人が賃貸借に関する全ての権利義務を承継します。他の相続人が誰もいなければ、連帯保証人が全ての義務を負います。
もしあなた自身が連帯保証人になっているのであれば、例え相続放棄をしたとしても、“連帯保証人としての義務”からは逃れることはできません。相続放棄をすれば被相続人の権利義務を負う必要がないため、連帯保証人としての義務もなくなるのではないかと誤解をされる方もいらっしゃいますが、保証契約はあなたと大家さんの間の契約ですので、相続放棄とは関係がありません。その点にはご注意下さい。
なお、現在のお住まいについては、もしあなたを契約者とする賃貸借契約が締結できれば、このまま住み続けることは可能です。その際の手続き等はそれぞれ異なりますので、オーナー様や管理会社にお尋ねになって下さい。
前号に引続き、実際に当センターへ寄せられたご相談内容を、個人情報に配慮した上でご紹介させて頂きます。
【ご相談内容】
半年程前に、父方の祖父が亡くなりました。相続人は、私の父とその兄及び姉。ただし、私の父は既に他界している為、私を含む3人の子供が父の代襲相続人となっています。つまり、祖父の相続人は計5人ということです。
問題は、遺言書が3通出てきた事です。1通目は平成元年に作られた公正証書遺言。内容は、『遺産を父の兄へ70%と父の姉へ30%相続させる』旨のもの。
2通目は平成15年作成の自筆証書遺言。内容は、『遺産を父の兄へ60%、父の姉へ25%、私へ5%相続させる』 旨のもの。
3通目は平成21年1月作成の自筆証書遺言。内容は、父の姉 『長女○○に全て任せる』 この文章のみ。他界する間際に父の姉に書かされたのでは?との疑いを持たざるを得ません。
『複数の遺言書がある時は日付の新しいものが有効』 とはよく聞きますが、内容が明確に明記されていない3通目でも法的に効力があるのでしょうか
また、自分達で遺言書に優先順位が付けられない時(モメてしまった時)は、どうしたらよいですか? 裁判にすべきでしょうか?
また、どちらにしても父の代襲相続人である私達3兄弟は遺留分の減刹請求をしたいと考えています。しかし、私の父は生前に遺留分の放棄を申し立てていたようで、家庭裁判所による 『遺留分の放棄を許可する』 という審判書が残っています。代襲相続人である私達3兄弟には、遺留分の権利はあるのでしょうか?
【回答】
相続発生後に複数の遺言書が出てきた場合は、内容の抵触する部分については、日付の最も新しい遺言書が有効となります。「抵触」というのは、両者が両立できないことを指します。従って、今回のケースでは、外形的には平成21年1月作成の3通目の遺言書が有効ということになります。
ただし、「長女○○に全て任せる」という表現だけでは、捉え方によって色々な解釈ができそうです。「全財産を長女に相続させる」という意味ともとれますし、「財産分けの配分を長女に一任する」という意味にもとれます。あるいは、「相続手続き(遺言執行)を長女に任せる」という意味かもしれません。あまりにも表現が曖昧過ぎる遺言は無効となる可能性があり、もしそう判断されると2通目の遺言書が有効となります。
遺言書について何か疑義が生じた場合には、まずは相続人全員で話し合いです。疑義が生じた場合とは、大別すると、
①遺言者本人が本人の意思によって記載したかどうかが疑わしい場合
②形式不備により無効であると考えられる場合
があります。
例えば、
「○○が無理矢理書かせた遺言だから無効だ」というのは①のケース、
「表現が曖昧だから無効だ」というのは②のケースにあたります。
相続人同士の話し合いで遺言書の有効性について全員の見解が一致すればいいのですが、現実は各相続人の利害が一致しないために話がまとまらないケースが少なくありません。そういった場合は、最終的には家庭裁判所へ訴えてこれを決するしかありません。
なお、遺留分の件ですが、 『遺留分を放棄した人が相続開始前に死亡して代襲相続が起こった場合は、この放棄の効果は代襲相続人にも及ぶ』 というのが民法の規定です。従って、祖父様の相続に対するお父様の遺留分放棄が、家庭裁判所の許可を得て有効に為されているのであれば、その代襲相続人である3人の子供達には遺留分の減殺請求の権利はありません。
争いのない相続を実現させるためには、遺言書の作成が最も有効な対策の1つです。しかし、作成した遺言書の内容次第では、それが逆に争いの種になってしまうこともあります。今回のご相談は異なる内容の遺言書が複数出てきた例でしたが、そうでなくとも、遺言の内容の解釈を巡って争ったり、誰かの遺留分を侵害する内容だったために減殺請求の問題が出てきたり、本人の意思による遺言かどうかで疑義が生じたり、とにかく様々な争いのパターンがあります。
折角遺言書を作成するのであれば、それが原因で死後に争いとならないように、作成する際にはやはり相続の専門家に相談しながら進めて頂きたいものです。
また、一度作成した遺言書の内容を変更したい場合は、訂正で済ますのか、1通目を残したまま2通目を作成するのか、1通目を破棄した上で2通目を作成するのか等、これも相続の専門家の意見を聞きながら慎重に判断する必要がありそうです。
とても暑い日が続いていますが、皆さんお元気にされていらっしゃいますか?
今まで福岡相続サポートニュースでは、相続に関する一般的な情報についてお伝えして参りました。今号からは、実際に当センターへ寄せられたご相談内容を個人情報に配慮した上で、ご紹介していきたいと思います。
皆様の相続対策の参考になれば幸いです。
【ご相談内容】
福岡市在住のAさんから、下記のようなご相談を承りました。
『 先日、家内が他界いたしました。
家内の名前の銀行預金にそこそこの金額が残っています。
他に相続(税)の対象になるようなものはないと思います。
私どもには子供はいません。家内に兄弟姉妹はいないのですが、家内の両親は健在で、北海道に在住しています。
しかし、家内の両親とは不仲で、10年以上連絡をとっていない状態です。
家内が亡くなったこともまだ伝えていません。
今後、どのような手続きが必要でしょうか。 』
【回答】
子供のない夫婦(Aさん・Bさん)のうち、Bさんが亡くなった場合には、まずAさんが法定相続人となります。そして、Bさんの両親が生きていれば両親、両親が既に他界しており、Bさんに兄弟姉妹がいればその兄弟姉妹も法定相続人となります。従って今回のご相談事例では、Bさんの相続人はAさんとBさんのご両親(Cさん・Dさん)の3人ということになります。
この事例でまず確認すべき事は、奥様が遺言書は残されていなかったか否かです。奥様が遺言書を残されていればそれに従って手続きを進められる場合があります。
しかし、遺言書が無い場合には、財産を相続するに際し法定相続人全員による『遺産分割協議』の作成が必須となります。
遺産分割協議書の作成には、以下の行為がBさん・Cさん・Dさんの3人全員で行われる必要があります。
①遺産の分け方について話し合いをし、合意をする
②合意内容を書面(遺産分割協議書)に残す
③書面に各自が署名・押印(実印)をし、印鑑証明書を添付する
Aさんはご両親とは不仲とのことですが、だからといって話し合いを避けることは出来ません。遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書等を銀行に提出しなければ、 預金の引き出しや名義変更も出来ないからです。
法定相続分は、ご主人様が遺産の2/3、ご両親が1/6ずつです。
しかし、全員の合意さえあれば法定相続分にこだわる必要はまったくありません。
Aさんが100%相続しても、ご両親が100%相続しても、とにかく自由です。
ただし、話し合いがまとまらなかった場合は法定相続分を目安に分けることになるでしょう。
また、銀行口座の預貯金を含めた遺産総額が8,000万円を超えるようであれば、相続税がかってきますので、相続税の申告手続きが必要となってきます。
【このような場合には】
子供のいない夫婦に相続が発生した場合、配偶者のご両親や兄弟と相続手続きを共同して行わなければならない場面が大半となります。
亡くなってしまった配偶者の財産分けを、自分からすると血縁関係のない配偶者の家族と行う事は精神的にもなかなかパワーのいるものではないでしょうか?
AさんのようにBさんのご両親と不仲である場合や、ご家族が遠方に住んでいらっしゃる場合にはなおさらです。結局AさんはBさんのご両親に主張され、法定相続分通りに遺産分割する事になりました。10年以上も音信普通だったにもかかわらずです。さらに遺産分割協議書に印を押して印鑑証明書を送ってもらうまでに1年もかかってしまいました。
このように、子供のいない夫婦の方は、自分に万が一の事があった場合に配偶者が困らないよう、公正証書遺言を作成しておく必要があります。そうすれば、残された配偶者の手続き負担は格段に軽くすることが出来ます。
サポートニュースもすでに連載30回を超えました。これまでに、遺言書作成や生命保険加入などの生前対策から分割協議や相続税申告という相続発生後の手続きまで、さまざまなテーマを取り上げてきました。第1回からご覧頂いている方は、相続について随分詳しくなられたのではないでしょうか。
そこで今回は、○×クイズ方式で簡単な復習を行ってみたいと思います。
あまり難しい問題ではありませんので、「まだ勉強を始めたばかりで・・・」という方もぜひチャレンジしてみて下さい。
<問題>
【第1問】
「遺産分割協議書」は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に必ず作成しなければならない。
【第2問】
先日亡くなったAさんは、公正証書遺言を遺していた。この場合、相続人は家庭裁判所で検認の手続きを行わなければならない。
【第3問】
被相続人は有効な遺言書を遺していたが、相続人同士の話し合いで遺言書とは異なる分け方で遺産分割協議書を作成した。この分割協議書は有効である。
【第4問】
先日亡くなったAさんには、母、祖父、妻、弟2人がいる。この場合、弟2人の法定相続分は1/8ずつである。
【第5問】
被相続人が遺した有効な遺言書には「自分の全財産を愛人に相続させる。」と書かれていた。この場合、法定相続人は一部ではあるが財産を取り返すことができる。
<解答>
第1問の答え ×
遺産分割協議書は必ずしも作成する必要はありません。従って、作成する期限もありません。ただし、遺言書がない場合は各種手続きにおいて分割協議書が必要になるため、更には後日の紛争回避のためにも、作成することをおすすめします。
第2問の答え ×
「検認」とは相続人に対して遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防ぐための手続きです。自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合にはこの「検認」という手続きが必要となりますが、「公正証書遺言」では必要ありません。
公正証書遺言は公証役場において公証人が作成しますので、無効となる可能性が極めて低く、検認が不要であるため相続手続きがスムーズに進められるというメリットがあります。
第3問の答え ○
遺言書がある場合、その遺言書が有効であれば遺産は遺言書の通りに分割されます。しかし、相続人全員が納得した上で遺言書と異なる分け方をして遺産分割協議書を作成した場合は、こちらが遺言書に優先します。
第4問の答え ×
設問の親族構成であれば、法定相続人となるのは被相続人の妻と母だけです。この場合の法定相続分は妻が2/3、母が1/3であり、祖父や弟2人に法定相続分はありません。
第5問の答え ○
法定相続人には遺留分がありますので、たとえ遺言書があっても、遺留分の範囲であれば取り返すことができます。これを「遺留分減殺請求」といいます。ただし、法定相続人であっても、兄弟姉妹には遺留分はありませんので注意が必要です。
相続発生後の一番の紛争場面は、親族間の遺産分割協議の場です。
分割協議では、誰かの取り分が多くなれば、その分別の誰かの取り分が必ず少なくなるわけですから、そういう意味では常に利害の対立が起こることになります。「もめるな」という方がそもそも無理な話かもしれません。
しかし、全員で合意できなければいつまで経っても誰も遺産には手をつけることができません。それでは誰も得をしませんし、将来にまでずっと問題を抱え続けることになります。
では、遺産分割をもめずに円滑に行うにはどうしたらいいのか?その基本的な心得を幾つか伝授したいと思います。
≪最初から「法定相続分」を持ち出さない≫
遺産分割協議がもめる原因の一つに、最初から「法定相続分」を持ち出す人が出てくることが挙げられます。“法定”と聞くとそれが法律上の義務であり絶対の権利であるかのような気がしますが、そんなことはありません。相続人全員が合意すれば、どんな分け方をしても構わないのです。法定相続分は、あくまでも遺産分けの1つの目安でしかありません。もっと言うと、相続人同士の話し合いがつかない場合に、最後の最後に持ち出す割合でしかないのです。家庭裁判所での審判となったときには、この法定相続分に基づいた判断が下されることになります。つまり、『法定相続分=法廷相続分』だと思っておいた方がいい代物なのです。
民法では、『遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする』と規定しています(民法第906条)。単純に「法定相続分が自分の権利だ」などと言わずに、色々な事情を考慮して分けなさいとしているわけです。
遺産分割の冒頭でいきなり法定相続分を持ち出したのでは、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。「法定相続分」を持ち出す前に、「分割の基準」をお互い熟考しましょう。幼少時代に兄弟姉妹でケーキを切り分けたときも、きっと各々の年齢や好みを考えて分けたはずです。それと同じ心配りが、遺産分割協議でも必要だということです。
≪幹事役を決める≫
幹事役の不在がもめる原因となっている場合があります。つまり、行司役の不存在です。各相続人の意見を交通整理して、協議全体をいい意味で取り仕切る人物を決めます。この幹事役は相続人の中から選んでもいいのですが、相続人は元々利害が対立する人達ですから、その対立が浮き彫りになる危険性も秘めています。相続人の中から幹事役を選ぶときは、選ばれた人は自分の主張をある程度抑える覚悟が必要になってきます。それが出来ない人を選ぶべきではありませんし、出来ない人は自ら幹事役に名乗り出るべきではありません。
そういう意味では、幹事役は利害関係のない人を選ぶのがベストな選択と言えるでしょう。ただし、それをいきなり弁護士に依頼すると遺産分割はギクシャクするケースが大半です。最初から相続人同士で話し合いをすることを放棄してはいけません。突然、弁護士から連絡があれば、誰しも平常心ではいられなくなります。「何でいきなり弁護士なんだ!?」と、相手の怒りを買うことは必至です。「そっちがそうくるのなら、こっちも弁護士を立てる!」となりかねません。
まずは相続人同士で一旦話し合ってみること、そして第三者に調整役を依頼するときは、タイミングを計った上で相続人全員の合意の基に依頼する方が賢明です。
≪相続人以外の人間に口を出させない≫
たまに見受けられるのが、相続問題に相続人の配偶者が口を出してくるケース。配偶者は、相続人にとってはこれ以上ない強力な援軍です。「兄弟姉妹は平等なはずだ」と言う配偶者がいれば、別の配偶者は「あなたは長男なんだからもっと貰って当然よ!」と言う。兄弟姉妹が激しく争っているように見えて、実際にはそれらの配偶者同士の代理戦争になっている場合さえあります。一般的に、配偶者が相続に口を出してくると益々話はややこしくなります。配偶者には悪気はないんでしょうが、まとまる話もまとまらなくなるのです。
また、相続人の子供達が口をはさんでくる場合もあります。子供達は次の相続時に親の財産を引継ぐわけですから、間接的な利害関係者となるわけです。「もっと貰っていいんじゃないの?」と親の尻を叩く子供も結構います。
更に、旧家や親類縁者の多い家などでは「本家のおじさん」とか「分家の代表」などと言って、相続に口を出してくる例もあります。これは、都会よりは田舎の方にそういった傾向がより強いように感じます。
相続はあくまでも相続人の問題です。極論を言えば、相続人以外の人間には何の関係もない話なのです。配偶者や周りの人の意見を求めるのは一向に構いませんが、協議の場にそういう人たちの意向が強く反映されると、相続問題は間違いなくもめます。相続人は自ら主体性を持って相続に臨みましょう。
≪一度決めたことを蒸し返さない≫
「隣の芝生は青い」というのは相続でも言える事です。「自分の相続分よりアイツのほうがいいモノを貰ってる」とか「アイツの貰った土地が値上がりしそうだ」とか、自分が相続したものより他人が相続したものの方が良く見えたりするのです。
しかし一旦決まったことに異を唱えることは避けましょう。そうしないと収拾がつかなくなり、いつまで経っても紛糾したまま、ということにもなりかねません。
≪感情に任せて昔の話を持ち出さない≫
相続の現場でもめてくると、必ず昔の話を色々と並べ立てる人が出てきます。そして、誰かがその手の話を持ち出すと、ほとんどのケースで、言われた方も同じような反撃を始めます。そうなると、争いは徐々にヒートアップしていきます。
相続人の追及は税務署よりも怖いとさえ言われています。自分達の昔の進学費用や結婚資金の話に始まり、マイホーム取得資金やリフォーム資金、あるいは子供の入学資金や結婚資金の話、果ては車の買換えのことまでお互いに知り尽くしていますので、誤魔化すことができません。相続人には、税務調査官以上の調査能力があると言ってもいいでしょう。一旦追及を始め出すとお互いそれをかわすことなどできず、まるでノーガードで殴り合うボクサーのような状態に陥ります。そして、いつの間にかお互いの“人格”を攻撃し合うことになるのです。
感情のまま頑なになって必要以上に昔の話を持ち出しても、何の得もありません。ましてや、相手の人格を攻撃するなど論外です。例えば自動車事故における示談と同じで、分割協議もお互いの歩み寄りがなければなかなか上手くまとまりません。お互いに歩み寄れる余地を常に残しながら話し合いを進めていくためにも、昔話はほどほどにしておきましょう。
世界に類のない速さで高齢化している日本。
2055年には高齢化率が約40%になるという試算も出ているほど、日本の人口において65歳以上が占める割合はどんどん増えていく見通しとなっています。
何かと問題視されているこの高齢化社会ですが、とても身近な問題として、『介護』の問題があります。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」(平成21年8月分)によると、在宅で介護または介護予防サービスを受けた人は約284万人、施設でサービスを受けた人は約83万人にも登っています。
また、平均寿命が男性79歳、女性が86歳となった今、介護する側の高齢化も進んでいます。例えば、『90歳の母親を70歳の娘が介護をする』といった光景は今では珍しくありません。
そして親族を介護する際に、やはり浮き彫りになるのはお金の問題。現行の介護保険制度では、利用者はサービス料の1割負担で公的介護サービスを受ける事ができます。しかし、1割という負担割合が今後も変わらないという保証はなく、上記の例の場合、年金生活の中から親の介護費用を捻出していくのはなかなか難しい問題です。また、兄弟の中の誰か一人が親の介護や介護費用を負担していた場合、それが原因で争族問題に発展するケースも増えてきています。
実際に、親の介護のために『仕事を辞める』という選択肢をとる『介護離職者』は年々増加。総務省の発表によると、平成19年で約14.5万人と平成11年の8.7万に比べ約1.7倍になっています。このような場合でも、資金的に施設介護が可能であったなら、離職までせずとも済んだケースが少なからずあるのではないでしょうか。
では、介護費用について経済的な準備をしている人はどのくらいいるのかを見ていきたいと思います。
生命保険文化センターの調査によると、「準備している人」は41.2%、「準備していない人」は55.9%となっています。さらに、準備している人に具体的な準備手段を聞いてみると、「預貯金」が29.5%で最も高く、次いで「生命保険」の23.7%となっています(複数回答)。
預貯金で備える手段も効果的ですが、介護状態が長期化してしまった場合、せっかく貯めた預貯金が底をつくのは時間の問題です。また、ある程度まとまったお金を準備するには時間もかかります。
こうした問題をクリアしてくれるのが、民間の各保険会社で加入できる『介護保険』です。
民間で備える介護護保険には、一般的に次の3つのタイプがあります。
1.終身保険などの主契約に「介護の特約」を付加する方法
2.主契約として「介護保険」に加入する方法
3.終身保険などの保険料の払込満了時点で介護保障に移行する方法
現在ご加入の生命保険と照らし合わせ、またその介護保険でどのような保障を受けられるのかをしっかりと確認したうえで、自分にあった介護保険で介護費用を準備する事をお勧めします。
この際、介護保険を選ぶポイントとなるのが『保障の対象となる要介護状態』の基準です。
これは各保険会社によって違います。保険会社自身で給付の介護状態を定めているところもあれば、公的な要介護認定基準をそのまま採用しているところもあります。
どちらがいいかは一概には言えませんが、公的な認定基準と同じであれば、どのような場合に保険金をうけとれるのかが分かりやすいですね。
また、介護保険を選ぶ際には、保険金の受け取り期間もポイントです。
受け取り期間には2パターンあります。
・10年や20年などの定期型
・一生涯受取れる終身型
これも、ご加入される方の考え方次第ですが、介護状態が長期化した場合に備えて、終身型をお勧めします。
では最後に、介護状態にならずにお亡くなりになった場合はどうでしょうか?
これにも保険商品によってさまざまですが、死亡給付金が給付される商品があります。この死亡給付金の受け取りの際には、{500万円×法定相続人}の額の非課税枠が適用になりますので、相続対策としても活用できるという事になります。
さらに、この介護保険、払い込み方法によっては解約した時の「解約返戻金」 が増えて返ってきたり、ほとんど減らずに返ってきたりするものもありますので、そのような点も加味して選ばれるといいでしょう。
備えあれば憂いなし。安心して老後を迎えるため、介護状態になった場合にあわてないために、介護費用の準備について、ご家族で話し合われてみてはいかがでしょうか。
「実印」や「印鑑登録」というと、私たち日本人には馴染みのものですが、印鑑を登録する制度というのは日本の他に韓国、台湾という限られた国でしか行われていません。
その代わりとして、欧米諸国をはじめとする多くの国では印鑑ではなく「サイン」が利用されていることは皆さんもよくご存じでしょう。日本に住んでいても、クレジットカードで買い物をした時などにサインを求められますので、随分サインをする習慣というものも浸透しているのではないかと思います。
しかし、いくら「サイン」をする文化が身近になっているとしても、家を買って不動産登記をする場合や車を購入する場合など、何かにつけて「実印」と「印鑑証明書」を要求されることが多いのは事実です。
相続もまた然り。遺産分割協議書や相続税申告の際など、手続きにおいて実印と印鑑証明書が必要になります。
今までのサポートニュースをご覧になった皆様はご存じでしょうが、遺産分割協議書というのは相続人全員の実印と印鑑証明が必要になりますので、もし相続人の一人でも海外在住の方がいらっしゃる場合は、「印鑑」の壁に突き当たる可能性があるということになります。国際化が進む昨今ではこのようなケースも少なくありませんので、本日は印鑑証明書が取れない方の手続きについてお話していきたいと思います。
日本においては不動産登記やローンの借り入れなど、さまざまな手続きの場面で印鑑証明が必要になります。日本に居住している方は、印鑑登録をしておけばすぐに印鑑証明書を準備することができますので、それほど不自由に感じたことはないかもしれません。
しかし、日本での住民登録を抹消して外国にお住まいの方は、住民登録抹消と同時に印鑑登録も抹消されてしまいます。そこで、法務局や銀行等では、海外に在留している日本人に対しては印鑑証明に代えてサイン証明の提出を求めています。サイン証明とは、日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので、申請者のサイン(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。
サイン証明をとるためには、関係書類とパスポートを持って申請者本人が現地日本領事館に出向き、係官の面前で関係書類にサイン(もしくは拇印)を行います(国によって必要書類が異なる場合がありますので、必ず事前に確認することをお奨めします)。これにより間違いなく本人が署名したということを証明してくれますので、このサイン証明書と関係書類を綴り合せて割り印をもらいます。(サイン証明書を単独でとる方法もあります。)
また領事館に行く以外にも、日本の公証役場に行く方法があります。これは「認証」という手続きで、サイン証明同様、公証人の面前で関係書類にサインをすることで間違いなく本人がサインしたことを証明するものです。公証役場に行く場合も、関係書類とパスポートか運転免許証、そして手数料が必要になります。この手数料は一般的に5,500円ですが、必要書類や手数料については必ず事前に確認してから行きましょう。
サイン証明も認証も、係官の面前で署名をするという点が重要になります。領事館、公証役場に持参する遺産分割協議書には、うっかり事前に署名をしないように十分にご注意下さい。
海外在住の方が相続人である場合、その人が日本に帰って来ている間にいかに効率よく手続きを進める事ができるかということが大切になります。もし相続税が発生する可能性がある場合は、10ヶ月以内に申告をしなければならないという制限もありますので、さらに注意が必要です。
ただし、このような事態をできる限り回避する方法があります。それが「遺言書」です。有効な遺言書がある場合は、遺産分割協議をする必要がありませんので、手続きがスムーズになります。海外在住の相続人は、相続登記をする場合などの手続きによってサイン証明が必要となる場合がありますが、遺産分割協議書の作成が不要となれば幾分か手続きが楽になるでしょう。その他の相続人に関しては、相続分の財産に関して単独で手続きができますので、非常に負担が軽減されます。
親族が亡くなった時、あまりの手続きの多さや煩雑さに、悲しんでばかりもいられないという声をよく聞きます。しかし、日頃から十分な知識を蓄え、生前から備えておくことで遺族の心の負担が少しでも軽減されれば、より一層幸せな相続に近づくのではないでしょうか。
遺された家族に争いなく財産を分けてもらうためには、遺言書の準備が不可欠の時代になっているということは、以前お伝えした通りです。従って、相続人が複数名いる方には例外なく遺言書の作成をお勧めしたいのですが、その中でも特に遺言が必要だと思われる代表的なケースを、今後折に触れてご紹介していきたいと思います。
第1回目の今回は、≪賃貸不動産をお持ちの方≫のケースです。
≪賃貸不動産をお持ちの方≫
親から古い賃貸不動産を相続して困っている子供は結構多いものです。収益が低い割に修繕費等がかさみますし、またオーナーとして一定の物件管理をしていく労力がかかるからです。遠方に住んでいたり、別に本業を抱えていたりしていれば、尚更大変です。
かといって、売却したいと思っても、そもそも収益の低い物件はなかなかそのままでは買い手がつきません。
結局、入居者を立ち退かせた上で建物を壊して更地にして売る必要に迫られます。しかし、入居者を立ち退かせるのも至難の業で、時間とお金がかかります。更に、建物の取り壊し費用も必要です。
それだけ苦労して売却準備を進めても思うように売れないということも考えられ、踏んだり蹴ったりという事態にもなりかねません。
では、収益が高い物件であれば問題がないのかというと、そうともいえません。何故なら、そんな物件であれば相続人全員が欲しがるからです。
仮に、収益力のある賃貸マンションと収益力の無い賃貸マンション(又は収益を生まない亡親のマイホーム)が遺産としてあった場合、どちらが欲しいかと尋ねれば皆が同じ答えを出すでしょう。誰がどの不動産を相続するかで話し合いが難航することは、容易に想像できます。
また、賃貸不動産がある場合、遺産分けでもめると別の問題も発生してきます。それは、相続発生後の毎月の賃料の取扱いについてです。
賃貸不動産そのものは被相続人が亡くなった時点で保有していた財産ですから遺産分割の対象であることは当然ですが、そこから発生してくる毎月の賃料は違います。これはあくまでも亡くなった後から発生した財産ですから、相続財産ではありません。この点、最高裁でも、「相続発生後、遺産分割が確定するまでの間に発生した賃料収入は、遺産である賃貸不動産とは別の財産であり、各相続人が法定相続分に応じて取得すべきである(最判平成17年9月8日)」という判断を下しています。
遺産分けの話し合いが難航すると、「いっそ共有にしてしまおうか」という話が出てきがちですが、それもまた問題です。不動産の共有は、単に問題を先送りするに過ぎません。
共有となった不動産では、自分の持分のみを売却することが実質的にできません。法的には可能ですが、現実には一部の持分のみを買ってくれる人はまずいないといっていいでしょう。
唯一現実的に可能なのは他の共有者に買ってもらうケースですが、購入資金の問題もありますから、話は簡単にはまとまりません。
また、自分の持分を担保に入れて金融機関からお金を借りることも、実質的に不可能に近いでしょう。売却するにしろ、担保に入れてお金を借りるにしろ、共有者全員の合意によりその不動産全体を差し出さない限り、現実的にはほぼ無理なのです。
更に、相続税の納税のために自分の持分のみを物納することもできません。共有不動産の物納は、共有者全員が物納する場合にしかできないと決められているからです。そして、これが賃貸不動産だった場合は、賃料の改定や契約解除、集金方法などに関する事項については、共有者の持分の過半の同意が必要になります。
更に、時間の経過と共に共有者自身にも相続が発生しますので、その相続人である配偶者や子供達が新たな共有者として加わってくることになります。まったく血のつながりのない人達がいつの間にか共有者となっていることさえあります。数十年の時を経て、共有者の数は増える一方で、お互いの関係性はだんだん希薄になっていきます。こうなると、共有者全員の意見の調整も非常に難しくなるでしょう。全員の合意がとれなければ、その不動産を売却することもできなくなりますし、過半の合意がとれなければ賃貸業の継続もままなりません。
不動産は、極力単独所有とするべきです。そして、それを遺言という形でしっかりと遺すことが必要です。
例えば、公正証書遺言で賃貸不動産を誰に相続させるかの指定をしておけば、極端な話、親が亡くなった次の日に指定された相続人が単独で名義変更することも可能になります。そうすれば、賃料も最初からこの相続人が単独で受取ることができ、アパートローンの返済に充てたりするなど自由に使うことができるのです。
なお、賃貸不動産を相続させる場合には、敷金等(の預貯金)もあわせて引継がせることを忘れないようにしなければなりません。賃貸事業を引継ぐ方は、当然、入居者に対する敷金等の返還義務も承継することになるからです。
遺言無しに賃貸不動産を残せば、あなたが永年頑張って発展させてきた賃貸事業そのものが立ち行かなくなる可能性があります。誰にどの不動産を相続させるのか、遺言でしっかりと指定しておくべきでしょう。
賃貸マンションや賃貸アパートなどをお持ちのオーナー様は、10年~15年に一度、賃貸物件のお手入れとして『大規模修繕』を行っていらっしゃると思います。
大規模修繕にかかる費用は物件によって様々です。従って、屋上の面積はどれくらいか、何階建てのどのような構造か、外壁はタイル貼りか否か、エレベータはあるか否かなど、その物件の状況に合わせて、修繕におよそいくらかかるのかを予測し、修繕計画を立てます。そして、大規模修繕費用は通常 数百万~一千万近くになる事から、長期間にわたって計画し、お金を貯めておく必要があるかと思います。
そこで、皆さんに質問です。大規模修繕費用を皆さんはどのように積み立てていらっしゃいますか?もし、毎月コツコツと銀行預金に預けていらっしゃるオーナー様がいらっしゃれば、この機会に保険で備える方法を検討されてみられてはいかがでしょうか?
というのも、現在の銀行預金の金利はすずめの涙。引き落とし手数料や振込み手数料とどちらが高いかというレベルです。
これに対し、単純比較できるものではありませんが、生命保険を活用すれば2%の積立利率が保障されているものもあります。(例:利率変動型終身保険(ソニー生命保険))また、万一の事があった場合に大きな保障が得られるのも大きな特徴です。
さらに、法人で物件をお持ちのオーナー様へは、税務上有利な生命保険があります。生命保険の掛け金が、『全額』損金へ算入できるというものです。
【個人で準備する場合の例】
1.終身保険
終身保険にも様々な種類がありますが、ここで活用するのは、「解約返戻金」が貯まる終身保険です。一般的には、短期間保険料を払い込み、修繕のタイミングに合わせて保険を解約し、解約返戻金を受け取ります。
例えば、契約した年から5年間保険料を払い込み、修繕を行う10年後に解約して解約返戻金を受け取るという流れになります。従って、10年後に解約返戻金をいくら受け取れるのか、保険料としての毎月の積立金をいくらまでなら払えるのか等を考慮して保険商品を選んでいきます。
2.養老保険
養老保険とは、保険期間中に万一の事があれば死亡保険金を、保険期間満了まで生存していた場合には満期金を受取れる『生死混合保険』と呼ばれている保険です。
大規模修繕を行う年に保険期間の満了が来るように設計します。被保険者(保険の対象となる人)の年齢が若い場合や修繕計画期間が長い(10年以上)場合に活用します。
ところで、解約返戻金や満期金を受け取った場合の税金が気になるところですが、税金については下記のようになります。
・契約者(保険料負担者)と受取人が同一の場合 ⇒ 一時所得として所得税の課税対象
(受取った金額-払い込んだ保険料の総額-50万)÷ 2 の金額が、その年の他の所得と合算され、所得税の対象とされます。
・契約者(保険料負担者)と受取人が違う場合 ⇒ 贈与税の課税対象
受取った金額-年間の基礎控除額(110万が限度) の金額へ、その金額における贈与税率が適用されます。また、相続時課税制度を利用することもできます。
また、解約返戻金や満期金を受取った人と、大規模修繕の対象となる物件を所有している人が違うと、金銭の『贈与』になりますので、注意が必要です。
【法人で準備する場合の例】
1.がん保険
がん保険にも様々な種類がありますが、がん保険の中で、保険料が全額損金として認められる種類のものがあります。この保険を活用すれば、毎年の保険料を全額損金として計上することで、節税効果が期待できます。
また、大規模修繕を行う年に保険を解約し、解約返戻金を受け取ると、大きなお金が会社に入ってくることになります。しかし、法人の期末までに大規模修繕にそのお金を使ってしまっていれば、会社に利益は残らない事になりますので、税金の心配も不要ということになります。
ただし、大規模修繕の内容が資本的支出と見られる場合には、修繕費の損金計上が出来ませんので、その点は税理士に確認しながら処理する必要があります。
大規模修繕費用を保険で準備するメリット
保険で大規模修繕費を用意するメリットとしては、下記のようなものがあります。
・被保険者(保険の対象となる人)に万一の事があった場合に、大きな保障が得られる。
・被保険者が高度障害状態・身体障害の状態になられたときに、保険料の払込みが不要となるものがある。
・保険料の払込みが厳しくなった場合や、一時的に資金が必要となって場合には、契約者貸付制度を利用できるものがある。
・被保険者が要介護状態や余命6ヶ月と診断された場合には、保険金額の前渡しを受ける事ができるものがある。
以上、保険で備える大規模修繕費用についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
具体的な内容や、利率、保険料をお知りになりたい場合には、お気軽にお問い合わせください!
「相続」というと、「40~50歳位までは関係ないだろう」と思っている方がかなり多いのではないでしょうか。日本人は長寿ですから、若いうちから相続を意識している人が少ないのも頷けます。しかし、未成年者が相続人となる事例は少なくありません。
ちょっと考えてみて下さい。未成年のうちに父母のどちらかが亡くなって相続が始まるというのは確かにあまり考えたくないですが、未成年のうちに祖父母が亡くなるというのは考えられなくもないですよね。
基本的に法定相続人となるのは被相続人の配偶者、子、兄弟姉妹ですので、孫が登場する場面はなさそうですが、「代襲相続」や「養子縁組」によって孫が相続人になることは十分に考えられます。代襲相続とは相続開始前に亡くなっている相続人の地位を、その子が引き継ぐものです。もし自分の兄弟姉妹の中にすでに亡くなった方がいらっしゃる場合は、気を付けておく必要があります。また、祖父母と孫が養子縁組を行っているケースというのも少なくありません。財産を多く持っている方は、相続税を減らす為に孫を養子にして法定相続人の数を増やすという手法をとることがあるからです。養子縁組をしていれば孫であっても法定相続人となりますので、相続手続きに加わらなければなりません。
では、未成年者が相続人となった場合にどのような手続きが必要になるのか、ご説明していきます。
【未成年者が相続人となった場合の手続きの流れ】
未成年者は、物件の売買契約を行ったり高額な物品を誰かに贈与するような法律行為を単独で行うことはできません。これは相続に関しても同様です。相続が開始すれば未成年であっても限定承認や相続放棄、遺産分割協議という法律行為にかかわりますが、これらの行為も未成年者が単独で行うことはできません。したがって、親権者や特別代理人が代わって手続きを行う必要があります。たとえば住居の賃貸借契約を結ぶ場合など、ほとんどの場合は親権者が未成年者に代わって法律行為を行えば問題ありません。
しかし相続の場合は親権者もまた相続人であることが珍しくありません。もし同じく相続人の立場である人が未成年者の代理として相続手続きを行えば、自分の利益のために未成年者の取り分を減らすような分割協議を行う危険性もあります。そのような観点から、未成年者と親権者の利益が相反する場合には、特別代理人の選任を申し立てなければならないのです。
特別代理人の選任が必要になった場合、その子の親権者または利害関係人が、子の住所地の家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てを行います。
申し立てに必要な費用と書類は下記の通りです。
(必要な費用)
・子1人につき収入印紙800円
・連絡用の郵便切手(金額は申立てする家庭裁判所に確認して下さい)
(必要となる書類)
・申立書 1通
・申立人(親権者)と子の戸籍謄本 各1通
・特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票 各1通
・利益相反行為に関する書面(遺産分割協議書の案など)
※事案によっては、このほかの資料の提出が必要です。
なお、特別代理人に選任される方は子の伯(叔)父・伯(叔)母であることが多いようですので、申立書に記載する候補者の欄にはそのような利益相反関係にない近親の方を書いておくとよいでしょう。この申立てによって特別代理人が選任された後は、この代理人が未成年者に代わって相続放棄を行ったり、遺産分割協議に参加して手続きを進めていくことになります。
特別代理人の役割は未成年者の利益を守ることですが、相続手続きは不慣れな上に相続放棄や限定承認、相続税申告など期限が定められたものも多く、特別代理人にとって負担も大きくなります。日頃から財産の分け方などについてそれぞれの意見や想いを共有しておくことが、スムーズな相続手続きのポイントだと言えます。
未成年者が相続人になるという状況は、あまり身近には感じられないかもしれません。しかし、遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、相続人の中に未成年者が含まれていても例外ではありません。これは未成年者本人や親権者だけの問題ではなく、相続人全員にとって避けられない問題になります。このような状況が生まれた際にトラブルにならないためにも、「誰が代理人になるべきか」、「財産はどのように分けられるのが望ましいか」、「被相続人となる人、相続人となる人がどのような想いを持っているのか」という点を共通認識として持っておくことが大切です。
